Society5.0的 タイムトラベル考察

過去や未来へのタイムトラベルは、多くの人にとって「夢の旅行」だろう。そのタイムトラベルとの出会いは人様々だ。H・Gウェルズの「タイム・マシン」や筒井康隆の「時をかける少女」だったり、テレビドラマの「タイムトンネル」やハリウッド映画の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」だったりするだろう。私の場合は小学生の時に読んだ「科学図鑑(宇宙)」だった。光のエネルギーを推進力に変換できる「光子力ロケット」を作って光とほぼ同じ速度で宇宙を航行して地球に帰ってくると、地上は未来になっている、というもの。「これって浦島太郎と同じだ。浦島太郎は宇宙に行ってきたのかな」と、子ども心に時間差の発生現象(タイムトラベル)に興味を持ったものである。この現象が、アイシュタインの、特殊相対性理論に基づいた「双子のパラドックス」という現象であることは高校生くらいになって知ったことだが、映画「猿の惑星」のラストシーンを観たとき、光速宇宙船と地球上の時間経過の違いだと納得した。高3の夏休み、仲間と徹夜で「タイムトラベルは可能か」で議論したとき、私が「未来に行けるマシンは出来るが戻ってこられない」という理屈を展開した根拠は、この特殊相対性理論に基づいたものだったと記憶している。

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ところで、先述したタイムトラベル作品の「時をかける少女」以外では、タイムトラベルのための装置(マシン)が登場する。映画の「タイム・マシン」でその装置は透明な球体と金属製の機体で出来ていた。「タイムトンネル」では、人が数人通れるほどの大きさのトンネルにリング状の光源パネルが奥へ続いていて、稼動すると点滅してタイムトラベルを実現していた。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」では、DMCのデロリアンを改造したマシンが登場。路面に炎の軌跡を残して空中に消え去るシーンは印象的だった。しかし、どのマシンも、タイムトラベルを実現するための仕組み、いわゆるエビデンス(科学的根拠)は示されていなかったように思う。

私たちの日常は、「縦・横・高さ」という3次元の空間の中にある。だが、実際にはもう一つ「時間」という次元が存在している。3つの空間と1つの時間で作られた4次元の世界で生きている。空間が3次元なように、時間も「現在・過去・未来」という3次元で存在しているとしたら、タイムトラベルは時間の3次元を往き来することだといえる。地上という平面の2時限でしか活動できなかった人間が、空を飛び、宇宙区間を飛び、別の天体、別の銀河まで飛行する。音速を超える速度で飛行し、やがて光の速度に近づく速さで宇宙空間を飛行する。そうした旅をすることで、地球上と宇宙船内で時間の進み方が異なってくる。というのが、私が科学図鑑で読んだ「タイムトラベル」だ。3次元の空間をものすごい高速で移動することによって、「未来」に出会えるということである。因みに、「過去」に出会うだけなら誰でも簡単に体験している。夜空に拡がる満天の星々。そのうちの相当数はもう既に存在していない。10億光年先の星の光は、10億年かって地球に届いている。もしのその星が5億年前に超新星爆発をおこしてブラックホールになってしまったとしたら、5億年前から光を発していない。しかし地球上では、これから5億年間その星は瞬き続けるのだ。

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光の速さが情報伝達の速さ、時の経過速度だというのがアインシュタインの特殊相対性理論の上の推測である。「光の速さ」と「時の経過」の関連性を正確に把握していないので、絶対的と言われていた「光の速さを遅くする」ことや、「止める」ことが最近の科学技術で実現したといわれても、タイムトラベルの可能性が高まったと感じることができない。むしろ空間をねじ曲げて、直線の始点と終点を近づけて短時間での移動を可能にする「ワープ航法」のような発想で、ワームホールを通ってパラレルワールドで過去や未来に旅する方法の方がイメージしやすい。しかし、それを実現するためのエビデンスはまったく想像も出来ない。ただし、私は、私の息子に「未来でタイムトラベルが可能になったら必ずそのサインを私に示してくれ」と伝え、孫、ひ孫と伝えるつもりなので、万一、現代でハワイに旅するくらいの感覚でタイムトラベルが可能になれば、私の所に何らかのサインが届くはずだ。もちろん私の子孫が20数世紀を待たずに途絶えてしまったり、人類が滅んでしまったら叶わないことだ。

では、突拍子もない未来ではなく現在の連続である「Society 5.0」の世界でなら、どんなタイムトラベルが可能になるだろうか。そもそもタイムトラベルには「親殺しのパラドックス」を代表に実現不可能な壁がある。つまり、例え過去に行けたとしても「過去に関与」することは出来ない、という不文律である。実体として過去に行っても実際に触ったり話したり食べたり出来ないのなら、VRタイムトラベルでも同じではないだろうか。

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VRはVirtual Reality(仮想現実)のことだ。他にもAugmented Reality(拡張現実)のAR、Mixed Reality(複合現実)のMRなどがあり、これらをひっくるめてXRと呼んでいる。数年前ある通信会社の研究所のイベントで、VRゴーグルを装着して、錦織 圭選手のサーブを打ち返すという体験をしたことがある。時速200km近い強烈なサーブに、かろうじてラケットをぶつけたときの衝撃は今でも忘れられない。もちろんこの技術の進化は早い。食感や体感、嗅覚なども仮想現実的に認識できるようになるだろう。では、VR進化形で何を見せるのか。タイムトラベルなのだから、本人が「過去の現実」と認識できなければ面白くない。コンテンツの質が問われるだろう。そこはAI(人工知能)とCG(コンピュータグラフィックス)の出番だろう。本人に関するあらゆる画像情報(家族、友人、同級生、クラブ活動等々の写真や動画)や個人情報(氏名や住所、血液型、病歴、学歴、職歴等々)をAIに集積して人生のすべてを網羅した個人記録を作成。同時に、この100年の歴史的事象をはじめ、風景や建築物の情報を網羅した社会情報を作成。年月日時、場所を指定すると瞬時にCGが画像を作成する。そこに本人が希望するストーリーを加味した世界を映像で創出させる。もちろん、その時点の出来事がもたらす未来も体験することが出来る。私が人生で唯一後悔している「高校でサッカー部に入らなかったこと」も、入部した未来を体験できるかも知れない。そして、ずーっと妄想している「ワールドカップの決勝でゴールを決める」シーンも体験できるかも知れない。

これはあくまでVRタイムトラベルでのことだから、映像体験にすぎない。しかし、Society 5.0の少し先になれば、脳に直接刺激して、本物と同じ体感や触感や痛みや感動を伴う体験、そして「記憶に残る」体験としてのタイムトラベルが可能になるかも知れない。4次元の世界を利用しなくても、3次元だけで成立する「タイムトラベル」。アーノルド・シュワルツェネッガー主演の映画「トータル・リコール」の世界が実現するかも知れない。

Society 5.0を構成する要素、「AI」「ロボット」「IoT」「ビッグデータ」などの最新テクノロジー、それらを元に進化する「バイオテクノロジー」などが連動して、「記憶に残るタイムトラベル」が実現する日は、そう遠くないかも知れない。(wanitel記)

*「私はこう考える」といった、タイムトラベルに関するみなさんの投稿を募集します。
投稿先:info@airobot-news.net

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