名古屋大学医学部附属病院と、Acompany(アカンパニー)は10日、東北大学病院、北海道大学病院と共同で連合学習を用いた安全な医療AIの構築に関する研究を開始することを発表した。本研究により、多施設間の医療データを用いたAI開発の安全な連携基盤の構築を目指すという。
近年、AIの医療分野への活用が注目されているが、個人情報保護の観点から、複数の医療機関が保有する患者データを安全に結合して学習することが大きな課題となっている。医療AIの高度化には、多施設の豊富なリアルワールドデータ(RWD)を活用することが不可欠だが、従来の手法では個人情報の漏洩リスクが高く、実用化が進んでいなかった。
本研究では、連合学習という新しい暗号技術を用いることで、この課題の解決を目指す。連合学習を利用すれば、データを秘匿化したまま機械学習を行うことができるため、個人情報を第三者に開示することなく、複数施設の医療データを安全に結合して学習できる可能性がある。
名古屋大学病院と東北大学病院が保有する、消化管出血の患者データを連合学習で秘匿化・学習し、追加の医療行為が必要かどうかを推定するAIモデルを構築・評価する。Acompanyはプライバシーテックの実用化研究開発を通じて得られた技術的知見と、連合学習ソフトウェアを提供する。名古屋大学病院と東北大学病院は、医学的知見と擬似的な患者データを提供する。
本研究を通じて、連合学習を用いた多施設のRWDの安全な結合による医療AIモデルの実用性が明らかになる。処理時間やAIモデルの精度など、実運用に耐えうるかどうかを検証する。新しい技術である連合学習が実際の医療データを用いてどれほど機能するかを示すことで、医療AIの発展に大きく寄与することが期待されるという。Acompanyは本研究を通じて得られる知見を活かし、プライバシー保護と医療AIの両立に向けた取り組みを一層加速させ、医療の高度化と個人情報保護の両立を実現する新たな一歩となるよう邁進するとしている。
プライバシーテックとは、個人のプライバシーを保護するためのテクノロジー(技術)。個人のデータを企業等が大量に保有する中、いかに個人に対して安心・安全なデータ保全・利活用を実現できるのか課題となっている。この課題を解決する技術がプライバシーテック。例えば、データを暗号化しつつ企業・組織間でデータ分析ができる次世代暗号技術「秘密計算」や「連合学習」、仮想のデータを生成する「合成データ」、個人識別性を排除する「匿名加工」などが挙げられる。