富士通研究所は24日、作業員のモニタリングによる作業効率化や品質向上などの加速が期待される製造現場の業務変革に向け、ローカル5Gを活用して、広大な工場全体に設置される多数のカメラで取得した大量の映像データを高速に解析可能なシステムの自動設計技術を開発したと発表した。
従来、映像解析処理は、現場に設置した高価なGPUを搭載したサーバー(GPUサーバー)上で行っていたが、今回開発した技術では、この処理を工程別に分割してコンテナ化し、安価なエッジサーバーと、データセンターに集約したGPUサーバーとで効率的に連携させて実行させる。
さらに、コンテナごとに必要な映像解析処理量に応じたCPUのクロック周波数やGPU能力などのリソース要件を設定できるようにすることで、高速性を保ちながらエッジサーバーとデータセンターに自動的に配備されるように設計することが可能となった。これにより、各現場のエッジサーバーにおける映像処理の負荷変動をデータセンター側で吸収し、ピーク時を想定したサーバー台数を整備することなく、最大3分の1までシステム全体のコストを削減できるという。
製造現場では、データ収集が困難な手作業の組み立て工程などにおいて、カメラとAI を使った映像解析を活用し、作業手順ミスや危険な動作などをリアルタイムに検出し、作業員にすぐに知らせることで、作業品質や効率を向上させ、カイゼン活動を加速させる取り組みが進んでいる。さらに、高速大容量な無線技術であるローカル5Gの活用によって、工場全体の映像を収集できるようになり、現場業務のDXが飛躍的に進展することが期待されている。
今回、エッジとデータセンターで映像解析処理を連携させ、各エッジにおける映像処理の負荷変動をデータセンターで吸収することで、エッジに設置するサーバー台数を必要最小限に留めるとともに、ピーク時を想定し処理性能を最適化したシステムを自動で設計する技術を開発した。
今回、作業品質の強化を目的に、組立工場を想定した実験環境において、16台分のFull-HDカメラで撮影した作業員の行動の映像から、組付け作業ミスと運搬物の滞留をAIで検出する映像解析システムを構築。16台のエッジサーバーとデータセンターを連携させたシステムを本技術で設計することで、数秒で作業ミスなどをフィードバックでき、かつサーバーを含むシステム全体のコストを最大3分の1まで削減できることを確認。本技術を用いることで、低コストでリアルタイムな映像解析システムの構築が可能になるという。