凸版印刷と東北大学発スタートアップのシグマアイは25日、共同で、量子コンピューティング技術の一つである量子アニーリングの研究を進めており、量子アニーリングを活用し、物流業務の効率化に向けた実証実験を10月から開始したと発表した。
本実証実験では、凸版印刷とシグマアイが共同で進めている量子アニーリングを、凸版印刷のグループ会社であトッパン・コスモが物流業界などに向けて提供している業務効率化・見える化システム「MITATE」(ミタテ)に適用し、計画立案機能を拡張することで、配車/配送計画などの業務の負担軽減、スピード・精度向上と、配送時間の縮減やそれに伴う環境負荷低減を実現する。
また、本実証実験の効果検証を通し、量子アニーリング活用のノウハウを蓄積し、重さ・大きさ・種類・荷姿など荷物に関する情報の安全・安心な運用・管理、集荷や配達に伴う配車/配送計画策定など、物流業務を効率化・見える化する物流デジタルトランスフォーメーション(DX)を目指すという。
近年のネットショッピングやカタログ通販を始めとする電子商取引(eコマース)の需要増により、物流の市場規模は拡大し、それに伴う物流量の増加と、それに対応する労働力不足が課題となっている。さらにコロナ禍の影響で、個人向けの配送が増え、荷物の配達と再配達など、トラックドライバーの負担が大きくなっている。これらの傾向はアフターコロナにおいても継続し、物流は事業活動や日常生活を支え、社会インフラとして益々重要になっていく。
物流業界に対しては、このような課題の他、配送トラックの燃料や排気ガスの増大などの環境問題や、道路の渋滞といった社会的課題への取り組みも求められており、それらに対応するため、トラック台数の削減、配送距離の最短化や渋滞回避ルートの選定など、配送計画を含めた物流システムの最適化が人工知能やIoTを使って進められている。しかし、配送先や荷物の種類、荷物到着時間やトラックの積載量など数多くの要件がある配送計画の算出には時間を要するため、急な変更に対応できなかったり、精度が低くなるなど、多くの課題があるという。
一方量子コンピュータの実証実験として近年、工場内の無人搬送車による配送の効率化や、製造ラインの従業員シフトの最適化などが行われており、物流現場においても複雑な制約や状況に応じた最適な計画を算出できる量子コンピューティング技術への期待が高まっている。
これらの課題に対して、凸版印刷とシグマアイは連携して、量子コンピューティング技術のひとつである量子アニーリングを、トッパン・コスモが物流業界などに向けて提供している業務効率化・見える化システム「MITATE」に適用する実証実験を開始する。本実証実験では、量子アニーリングによって、計画立案機能を拡張し、配車/配送計画などの業務の負担軽減、スピード・精度向上と、配送時間の縮減やそれに伴う環境負荷低減を実現。また本取り組みを通じて、量子アニーリングの活用と、物流業務の効率化・見える化に関するノウハウを蓄積し、凸版印刷が保有するデジタル技術と高度なオペレーションノウハウを掛け合わせ、データ活用を機軸としたハイブリッドなDXサービスを物流業界に提供し、物流DXを目指すとしている。