AIを利活用したサービスによる社会課題解決に取り組むエクサウィザーズは9日、同社が提供するマルチモーダルなロボットAIソリューション「exaBase ロボティクス」によって、重機操業における作業状況を可視化し、熟練作業の効率的な技能伝承を実現するデータ解析基盤を構築したと発表した。2月から、日本製鉄の東日本製鉄所君津地区で同解析基盤の検証を開始した。
少子高齢化に伴う人手不足や製造現場での技能伝承の課題を背景として、産業基盤のDXによる「遠隔化・自動化」の推進が喫緊の課題となっている。
製鉄現場では、溶けた鉄の成分、品位調整をする際に発生するスラグを分離する作業が必要になる。この作業では1000度を超える高温溶融物を扱うため、作業員は現場に設置したカメラで確認しながら重機を用いて遠隔操作で作業を実施している。高温溶融物の状況が変化する中での作業には、作業員の知識・経験に基づく判断が重要であり、効率的に技能伝承を進める上で実作業の指標化や熟練技能者のスキル・ノウハウを形式知することが難しいといったことが課題となっていた。
この課題解決に向け、エクサウィザーズと日本製鉄はスラグ分離作業における重機操業デジタル化プロジェクトを進めている。今回、同取り組みの一環として「exaBase ロボティクス」を用いて重機操業における熟練作業の技能伝承を実現するデータ解析基盤を構築し、東日本製鉄所君津地区において検証を開始した。これにより、重機操業においてこれまでデジタル化できていなかった様々なデータの可視化を実現するとともに、作業における熟練要素の解析を行うことで、勤続10年以上のオペレーターに現れる操業技術を明確にすることができた。また同時に、新人オペレーターにおいても熟練オペレーターと同様の操業が行えるようにAIが作業者に向けた要点を提示することで補佐するソフトウェアを敷設したため、今後、同作業の効率化および均質性の向上が期待されるという。