NHK出版は30日、「ガイア理論」を提唱して20世紀後半に一世を風靡した世界的な科学者ジェームズ・ラヴロックが、地球と生命の未来を大胆に予見した書籍『ノヴァセン』日本語版を刊行した。
地球という惑星は生命と互いに影響し合うシステムであり、一つの生命体のようなものだー―というガイア理論を20世紀後半に提唱し、地球の捉え方にパラダイムチェンジを起こしたジェームズ・ラヴロック。
世界的な科学者にしてヴィジョナリーでもあるラヴロックが、100歳の誕生日に合わせて刊行した最新刊『ノヴァセン』において、刺激的でスリリングな未来を論じている。近い将来、人間の知能を遥かに凌駕するAI(=超知能)が出現し、地球は人類を頂点とする時代から、人類と超知能が共存する新たな時代(=ノヴァセン)に移り変わると予測する。
ノヴァセンとは、ラヴロックが新しい地質年代として名付けたもの。その前の地質年代は18世紀の産業革命の時代に始まったアントロポセン(人新世)で、アントロポセンにおいて人類は、生態系を含む地球全体にまで影響を及ぼすほどの力を手にした。しかしアントロポセンは間もなく終焉し、ノヴァセンがもうすぐ始まるのだという。
ノヴァセンでは、人間より思考も計算も遥かに速く行なえる「超知能」が出現し、超知能と人類が協調しながら地球というシステムを維持していくことになるというのだから、衝撃的だ。さらに超知能から見た人間は、ちょうど人間が植物を眺めるようなもので、認知も行動も極端に遅い種だと感じるだろうとも指摘する。こうしてノヴァセンにおける人間の役割は、自分よりも賢い存在である「超知能」という子孫を生み出し、その進化を促すことへと転換するのだ。
いま、地球上では新型コロナウイルスが蔓延して人類の脅威となっている。気候変動も地球環境や生態系を傷つけ、その存続を脅かしている。地球や生命が危機に直面しているいまだからこそ、地球という惑星の特性を誰よりも真摯に研究し論じてきた100歳の叡智が地球の行く末を語った言葉に耳を傾けたい。