国際電気通信基礎技術研究所(ATR)とヴイストン、隆生福祉会、科学技術振興機構(JST)は9日、ATRとヴイストンが共同開発した赤ちゃん型ロボット「かまって『ひろちゃん』」との触れ合いが認知症高齢者(要介護者)とその介護者に及ぼす効果を検証する長期的な実験(10月下旬から6カ月を予定)を隆生福祉会の介護施設(「特別養護老人ホームゆめパラティース」)で開始すると発表した。
10月下旬から開始する実験では、要介護者1人に1台のひろちゃんを提供し、長期間、実際の介護業務の中でひろちゃんを利用してもらう。この実験を通じて、要介護者がひろちゃんと飽きずに長期間関わってくれるか、癒やしの効果があるか、また、要介護者とひろちゃんとの触れ合いの副次的な効果として、介護者の負担軽減の効果があるか、などを明らかにする。まずは1カ月、介護施設「ゆめパラティース」で要介護者10名程度を被験者とした予備実験を行い、その後、被験者数や施設数を増やして本格的な実験を行う予定だという。
今後は、この実験の状況を紹介したり、ひろちゃんを使った介護レクリエーションの方法を紹介するWebサイト(ひろちゃんコミュニティサイト)を開設して情報発信を行うとともに、コロナ禍で孤立しがちな高齢者施設の社会的な繋がりを支援していくろいう。
ひろちゃんの長期的な導入で得られるノウハウに基づく現場での運用マニュアルの作成や、ひろちゃんを効果的に利用するためのセミナーの開催など、ひろちゃん運用専門家の育成にも取り組む。海外では要介護者への癒しに人形を使う取り組みを「ドールセラピー」と呼んでいる。同社では、ひろちゃんのように要介護者へ働きかけ(インタラクション)を行うロボットを「インタラクティブドール」と呼び、ひろちゃんを通して要介護者と介護者を支援する「インタラクティブドールセラピー」の創出を目指す。