順天堂、熱中症入院患者のAIによる高精度な予後予測モデルを開発

順天堂大学医学部附属浦安病院救急診療科の平野洋平 准教授らの研究グループは27日、日本救急医学会による「熱中症患者の医学情報等に関する疫学調査(Heatstroke Study)」のデータベースに、AIの機械学習手法を用いることにより、入院した熱中症患者の生命予後を高精度で予測するモデルの開発に成功したと発表した。

さらに、本研究では、熱中症の予後予測に関わる重要因子について比較検討を行った結果、来院時の体温だけでなく、意識障害や肝障害マーカーの上昇が予後予測に寄与していることを見出した。本成果は、熱中症の治療選択サポートや治療の質の評価など、今後の熱中症診療の発展に利用されることが期待されるという。本論文はScientific Reports誌に掲載された。

本研究では、日本救急医学会による「熱中症患者の医学情報等に関する疫学調査(Heatstroke Study)」のデータベースのうち、2014年と2017~2020年の計5年間分のデータを使用した(Heatstroke Studyには2015年と2016年のデータはない)。熱中症症例の中でも、入院が必要であった症例のみを抽出した。また、来院時に既に心停止となっていた症例を除いた結果、全2393例が抽出された。

この全2393例のデータを、①機械に学習させ最適な予測モデルを作成するために使用するトレーニングデータ(1516例、2014年と2017~2019年のデータ)と、②開発された機械学習モデルを実際に検証するために使用するテストデータ(877例、2020年のデータ)に分類。予測する対象は、入院中の死亡と設定した。

予測に使用する情報としては、年齢や性別などの患者情報、来院時の意識状態や血圧、脈拍などのバイタルサインの情報、及び来院後に採取された血液検査結果など合わせて計24の情報を使用した。最適な機械学習モデルを模索するために、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、XGBoostという多種類のモデルでの検討を行った。

その結果、分類評価指標としてよく用いられるAUROC(ROC曲線下面積)及びAUPR(PR曲線下面積)による評価では、検証されたすべての機械学習モデルにおいて、高い精度での入院中の死亡の予測に成功した。特に本研究のような予測結果のバランスが偏っているデータでの評価指標としてよく使用されるAUPR(数値が高いほどよい精度)では、ロジスティック回帰で0.415、サポートベクターマシンで0.395、ランダムフォレストで0.426、XGBoostで0.528 の精度で予測できた(図1)。

これは、患者の重症度評価に一般的に使用されるAPACHE-IIスコアと呼ばれる指標のAUPR 0.287を統計学的に有意に凌駕していた。さらに、ロジスティック回帰、ランダムフォレスト、 XGBoostモデルの開発に寄与した予測因子の重要度の比較検討を行い、来院時の体温よりも来院時の意識状態や肝障害マーカーの上昇が予後予測に重要であることを見出した(図2) 。

以上の結果から、熱中症入院患者において、初の機械学習を用いた高精度な予後予測モデルの開発に成功したという。

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