東北大学災害科学国際研究所、東京大学地震研究所、富士通、川崎市は、3月12日に行われる川崎区総合防災訓練において、スーパーコンピュータ「富岳」の津波シミュレーションで構築したAIによる高解像度かつリアルタイムな浸水予測データを活用する避難の実証実験を実施する。
本実証実験では、富士通が開発した専用のスマホアプリを通じて参加者に津波の到達時間や浸水の高さを通知するとともに、スマホアプリのメッセージ送信機能を使って参加者同士で逃げ遅れている人に避難を呼びかける地域コミュニティが一体となった安全かつ効率的な避難の有効性を検証する。
4者は、2014年に川崎市と富士通が締結した持続的なまちづくりを目指した包括協定の一環として、2017年から「川崎臨海部におけるICT活用による津波被害軽減に向けた共同プロジェクト」を進めている。本実証実験を通じたスマホアプリによる情報の提供方法の有効性検証を踏まえ、津波浸水予測AIの社会実装に向けた取り組みを進め、より安全な社会づくりに貢献していくとりている。
実証実験では、東北大学災害科学国際研究所今村文彦所長および東京大学地震研究所古村孝志教授による監修、助言のもと、富士通が開発した専用のスマホアプリを通して、スーパーコンピュータ「富岳」を用いて構築したAIによる津波浸水予測情報を、避難訓練の参加者に配信する。その際、AIによる予測情報の不確実性を含めて本実証実験の事前説明を受けた参加者(災害情報リーダー)には、AIが予測する津波到達時間や浸水の高さなどの詳細な情報が、また、その他の参加者には、自身がいる場所に浸水予測が出ていることを示すテキストメッセージがアプリの画面上に表示される。避難時には、災害情報リーダーがコミュニティ内の参加者の現在位置を確認し、逃げ遅れている参加者にスマホアプリのメッセージ送信機能を使って注意喚起を行うことができる。これにより、コミュニティ内の情報共有を活性化させ、参加者が一丸となって協力し合う、より安全かつ効率的な避難を目指す。
4者は、本実証実験を通して得られた参加者からのフィードバックをもとに、より安全かつ効率的なコミュニティ型避難を実現するためのAIによる災害予測情報の伝達手段や活用方法について検討を進めるとともに、防災を支えるAIの利用促進や実用化を推進し、より安全な地域社会の実現に貢献していくという。