UPDATERの再生可能エネルギー事業「みんな電力」と東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻田中謙司研究室は24日、共同でAIによる発電量予測モデルの研究に取り組み、再エネ発電所の発電量を予測する「みんな電力 発電量予測システム」を開発したと発表した。
本システムの予測値を一般送配電事業者の予測相当値と比較したところ、本システム予測値が15%高い予測精度を達成したという。
2021年9月から、みんな電力が電力調達を行う一部の非FIT発電所の需給管理に本システムを導入しており、さらに2022年4月のFIP制度導入に伴い、みんな電力が再エネアグリゲーターとして、契約発電所の発電量予測に本システムを運用していくという。
第6次エネルギー基本計画で電源構成における再エネ比率は2030年度36~38%まで引き上げられ、主力電源として最大限導入される方針が示された。一方、再エネによる発電は気象条件に左右されるため、需要に対してどの程度の発電量が見込めるのか、その予測精度は再エネ活用のポイントとなる。
さらに2022年4月にはFIP制度が開始され、発電事業者は発電量の「計画値」と「実績値」に誤差があった場合、インバランス料金を支払う必要があるなど、発電量予測技術に対するニーズは一層高まっている。
みんな電力と東京大学大学院技術経営戦略学専攻 田中研究室は再エネの主力電源化を後押しできるよう、「みんな電力 発電量予測システム」の開発に至った。
みんな電力は2018年から本システムの構想を開始し、2020年11月から東京大学 田中研究室と予測モデルの共同研究に着手した。みんな電力でシステム構築、運用を行い、共同でAIの機械学習を用いた発電量予測モデル開発を行っている。
本システムは太陽光発電所・風力発電所において、過去の発電量実績データや気象予測データを機械学習させて開発した予測モデルを用い、翌日の発電量予測を行うもの。1日前市場(スポット市場)の入札締め切りである前日10:00までに、単独の発電所における翌日24時間の30分ごとの発電量予測データを算出でき、同市場の入札に反映することが可能。
本予測モデルにおいては、予測に用いる気象要素(説明変数)を選定することで予測精度向上を目指すため、以下のような観点で説明変数の選定を行っている。
■本モデルの主なポイント
・気象予報メッシュデータの気象要素の選定
・気象予報メッシュデータの時空間方向の情報の活用
・取得可能なデータ期間に応じた利用データの選定
2022年4月から再エネ普及の促進を目指すFIP制度が開始。FIP制度では、FIT制度と異なり、発電量の「計画値」と「実績値」に誤差があった場合、発電事業者に対してインバランスリスクが生じる。
みんな電力はアグリゲーターとして、プラットフォーム「ENECTパワープール」を運用し、FIP制度を利用したサービスを発電事業者に対して提供予定。同社バランシンググループ(BG)である「ENECTパワープール」に利用を希望する契約発電所を組み入れ、みんな電力で本システムで予測を行うことで、発電事業計画の精度向上やインバランスリスクの低減を目指す。
この取り組みは利用を希望する発電所と契約が完了次第、順次開始する。
今後も共同研究を通じて、利用する気象データの拡充やさらなるモデルの検討に取り組み、本システムの予測精度の向上を目指す。精度向上に伴い、現在は前日に入札を行う1日前市場(スポット市場)での活用を想定しているが、実需給の直前まで利用できる時間前市場(当日市場)にも対応していく予定。
合わせて、単独の発電所単位での発電予測にとどまらず、発電バランシンググループごとの予測モデルやシステム構築にも取り組む。
また、2022年度中には非FIT電源を扱う発電事業者、小売電気事業者向けに本システムのサービス提供開始を目指す。みんな電力はアグリゲーターとして2025年14億kWhの取り扱い電力量を目指しており、本システムの活用を通じて、再エネの利用拡大に貢献していくという。