CAC、準天頂衛星システム「みちびき」とブロックチェーンで配達員保険システムの実証実験
社会や産業のデジタルイノベーションに取り組むシーエーシー(CAC)は19日、準天頂衛星システム「みちびき」を利用した「みちびき×ブロックチェーンを用いた配達員保険システム」の実証実験を行ったと発表した。
この実証実験は、内閣府と準天頂衛星システムサービスが主催する「2021年度 みちびきを利用した実証事業公募」に基づき行われたもの。
社会問題になっているフードデリバリーサービス配達員による危険運転問題を解決するため、「みちびき」の SLAS(サブメータ級測位補強サービス)を活用して配達員の運転情報と連動する保険システムを開発し、2021年9月から 2022年3月にかけて市街地(東京都江戸川区)で実証実験を実施した。
本実験においては、SLAS 受信機で走行中の自転車の位置情報を取得・処理・判定して、ブ
ロックチェーン上にデータ(下記①と②のデータ)を保存するシステムと以下のアプリを開
発した。
① 配達員用スマホアプリ
配達員が配達中に使用するアプリ。配達ルートの選択(例.予め設定した推奨ルートを逸
脱していないか)や走行中のルール違反(例.逆走等)をリアルタイムで判定し、スコア
化する等の機能を実装。
② ユーザー用 Web アプリ
保険会社等が使用するアプリ。各配達員が加入中の保険情報や保険グループの情報を確認し、保険料のシミュレーションを行うことが可能。
実験では、「推奨ルート以外を走行していないか」「スピードを超過していないか」について
スマホアプリで走行中の位置等の情報を収集し、配達結果を正しく評価できるか、そして、
ブロックチェーン上で共有された配達スコアから保険料を計算する検証を実施した。保険料の計算では、グループ保険の形式を想定してグループ単位でグループ内の各配達員の保
険料を自動的に計算するブロックチェーンのスマートコントラクト(予め設定された条件に沿って契約を自動的に執行する仕組み)を開発した。
今回の実験では、市街地において、本システムにより配達員が走行した位置情報を正確(誤
差 1m 以内)に取得でき、配達を評価するスコアを想定したパターンで計測可能なことが分かった。また、フードデリバリーサービス会社と保険会社間でブロックチェーンの仕組
みを用いてスコア等のデータを改竄できない形で共有できることを確認した。
一方で、課題も明らかになった。今回の実験ルートは比較的単純なルートだったが、実際の配達ルートは頻繫にカーブが続いたり、道路幅員が変化する等、より複雑になる。こうした複雑なルートの場合、現在の判定アルゴリズムでは誤判定されるケースがあるため、改善が必要だという。
CACは、今回の実証実験結果を基に、複雑なルートにも対応できるルール違反判定アルゴリズムの改善や事業化に向けたコストの精緻化等を検討し、事故の低減に貢献するシステムの開発を進めていくとしている。