エビデント、胃がんAI病理診断支援ソフトウェア連続症例評価でAUC0.96を達成

エビデントは29日、同社が独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンターを含む国内医療機関7施設との共同研究で開発した胃がんAI病理診断支援ソフトウェアが、学習データに使用していない施設での連続症例における評価でAUC(*1)0.96を達成したと発表した。

本研究成果は、2023年8月24日から26日まで開催された第21回日本デジタルパソロジー・AI研究会定時総会で、米国国立衛生研究所(NIH)米国国立がん研究所(NCI)研究員 谷山大樹氏が発表した。

エビデントは2017年から呉医療センター・中国がんセンターを中心とした共同研究を開始し、18年にコンボリューショナルネットワーク方式を採用した胃生検のAI病理診断支援ソフトウェアを開発、20年から精度の向上と汎用性の確立に取り組んでいる。今回は本AIの精度をより高めるため、見逃しやすい胃がんとされる印環細胞癌の学習データを新たに追加した。そして実際の医療現場での性能を確認するため、学習データとして使用していない1施設から提供された病理画像を用いて検証を行った。

この施設の2021年7月から12月までの1000検体を超える連続症例を本AIで判定した結果、標本画像を学習データに使用した施設と同等の精度(AUC 0.96)を達成した。病理標本の染色方法やスライス方法は医療機関によって異なり、AIでの診断補助は難しいとされているが、本AIは、学習データに使用していない施設に適用した場合でも影響を受けないことが示唆された。

この成果を踏まえ、次のステップとして、本AIを同社ホールスライドイメージングシステム「SLIDEVIEW VS-M1J」に試験的に搭載し、病理医の作業ワークフロー上におけるAI診断補助の効果検証をスタートする。

今回は、本AIの精度をより高めるため、対象とする胃がんの種類をこれまでの6種から7種(腺癌:管状腺癌・低分化腺癌、乳頭腺癌、粘液癌、印環細胞癌、消化管間質腫瘍、MALTリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫)に増やした。これにより、日本における胃がん全体の9割をカバーしたことになる。

本AIによる胃生検の判定イメージ。上段:デジタル病理画像、下段:AI判定。陽性は赤、陰性は青で表示される。

まず、7種の胃がんの病理画像を用いて、病理医ががんと非がんの範囲を特定した学習データを作成し、AIに学習させた。次に、学習データ用に病理画像を使用した6施設と、使用していない1施設とに分けて評価を行い、施設間でAIの性能に差がないかを検証した。すべての病理画像は、同社製品である高性能対物レンズ「X Line」を搭載したリサーチスライドスキャナー「SLIDEVIEW VS200」で取得した。

エビデント VS-M1-IVD1

施設間での判定の結果、本AIは学習データ用に病理画像を使用した施設でAUC0.95、使用していない施設でAUC0.96と、ほぼ同等の精度を確認することができた。これにより、多施設に適用した場合でも施設間の影響を受けにくく、安定した手法であることが示唆された。

今回の成果を踏まえ、エビデントは次のステップとして、本AIを同社ホールスライドイメージングシステム「SLIDEVIEW VS-M1J」に試験的に搭載し、病理医の作業ワークフロー上におけるAI診断補助の効果検証に入る。また実用化に向けて、プログラム医療機器として薬事承認申請を目指すという。

*1:AUC(Area under the curve)=検査方法の評価項目のひとつで、0から1の値をとり、1に近いほど、精度の良いことを示す。

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