ダットジャパンは13日、最新のAR技術を活用し、遠隔でリアルタイムに医療画像処理業務をアシストするツール「どこでも君・医療(仮称)」の実証実験を5月から、杏林⼤学医学部付属病院(東京都三鷹市)と開始すると発表した。
本実証実験では、新型コロナウィルス禍により重要度を増している遠隔画像診断支援と高度化・多様化する医療画像処理装置の操作習熟のための教育支援を目的に、最新のAR技術を用いた最適な遠隔支援システムの構築を目指すという。また、支援内容の動画と音声を効率的にマニュアル化する技術により、熟練者の技術・暗黙知を体系立てて共有出来る機能も実現する。
現在の医療では、患者中心の医療を実現するために、「根拠に基づく医療」の概念が注目され、X線撮影をはじめ、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)による客観性の高い検査の重要性が増している。さらに、近年の高度医療機器の発展により、これらの医療用画像を処理する装置が多様化、複雑化し、処理装置の操作習熟に期間を要するようになっている。
しかし、医療の現場では、迅速な画像情報の提供が望まれ、処理装置操作の習熟度不足による画像情報の提供遅延や誤った処理による画像表示が、重大な事態につながる危険性もはらんでいる。処理の習熟度を迅速にかつ均一に向上にさせるためには、高度化する医療機器の発展に追随できる教育環境を整えることが求められている。
従来の映像と音声のみの遠隔支援システムを、医療画像処理と教育支援の場面に適用したとしても、十分な支援が実現できない事が課題となっている。
こうした背景と課題のため、現実に運用可能な遠隔支援技術の提供が求められており、『どこでも君・医療(仮称)』独自の機能により、従来の遠隔支援ツールの課題を解決するという。
・AR技術によりモデリングした熟練者の手を表示する事で、画面越しの指差し指示を実現
・支援結果を録画・編集し動画マニュアル化、PDF等のマニュアルと併用し分かり易く支援
・スマートグラス等のハンズフリーデバイスの表示用に最適化したUIの実現
・Webブラウザのみで動作が可能
・熟練者の暗黙知の形式知化
遠隔でサポートを行う場合、熟練者による撮影支援が不可欠だが、すべての機器に習熟した技師の数は限られているため、支援を行う人材の確保自体も難しいのが現状。
そこで、同社の開発するAR機能を用いて熟練者により遠隔作業支援を行いながら、その結果を記録・編集した動画マニュアルを作成し共有する事で、限られた熟練者の技術を数多くの人材が利用出来る仕組みを構築する。
これまでのAR技術は現場Live映像とのキャリブレーション(ARを現実に重ねるための同期処理)が必要な場合や、複雑な事を表現し過ぎてしまい、現実的な作業に即さない仕様のものが多かったが、本システムはARを極めてシンプルにし、小さい画面でも作業性を損なわないUIの仕様が「どこでも君・医療(仮称)」の最大の特徴だという。