日立製作所(日立)は30日、栃木県と栃木県国民健康保険団体連合会(栃木県国保連)に、AIを活用した保健事業支援サービスを提供したと発表した。2021年6月から、栃木県内において糖尿病の重症化予防に向けた本サービスの本格運用が開始された。
栃木県では、県民の糖尿病重症化予防のため、2017年度から「栃木県糖尿病重症化予防プログラム」に取り組んでいる。これまでは、市町が県から提供された県プログラムに基づく保健指導の対象者リストをベースに、限られた人的資源の中、より糖尿病リスクの高い被保険者に保健指導を行うため、年齢・性別・既往歴などの情報から手作業でさらに対象者を絞り込んでいた。
今回、日立の医療ビッグデータ分析技術・ノウハウを活用し、過去8年分の個人を特定できない匿名化された医科・調剤レセプトや健診のデータを基にした、糖尿病の重症化予測に特化した栃木県独自の予測モデルを構築した。これにより、保健指導対象者の糖尿病リスク度が付与されたリストを提供することが可能となり、市町の負担が大幅に軽減されることとなるという。
近年、厚生労働省の「国保ヘルスアップ支援事業」をはじめ、都道府県や市町村が実施する保健事業において、データを活用した効率的な実施状況の把握や重症化予防に向けた効果的な保健指導などの推進が求められている。
栃木県では、生活習慣病の一つである糖尿病患者数が、約5万5000人と全国平均を上回り年々増加している。県独自の予防プログラムである「栃木県糖尿病重症化予防プログラム」では、県民のレセプト・健診データを用いた保健指導対象者の抽出や、保険者と医療機関が連携した保健指導といった効率的な糖尿病重症化予防施策を進め、さらに、2018年度には、プログラムの基準に基づく対象者を抽出する独自の仕組みを構築した。
一方、保健指導対象者が多いことから、保険者が緊急に対応すべき指導対象者の選定に苦慮し、より効率的・効果的な仕組みが求められていた。そのため、日立は、「栃木県糖尿病重症化予防プログラム」の一環として、本サービスを提供し、栃木県内において6月より本格運用が開始された。
今回、日立は、糖尿病を含む生活習慣病に関わる将来の受診や入院のリスク、医療費を精緻に予測可能な日立の医療ビッグデータ分析技術・ノウハウを活用し、匿名化した県民のレセプト・健診のデータを用いて糖尿病の重症化予測に特化した栃木県独自の予測モデルを構築した。
この予測モデルを活用することで、空腹時血糖をはじめとした血液検査数値や過去の病歴など健康状態に関わる項目と糖尿病重症化リスクを結び付け、先の5年間において、糖尿病が現状から重症化し、受診や入院が必要になる確率を算出することができる。また、本サービスでは、被保険者単位で糖尿病既住歴の有無などから将来の発症リスクを3段階で判定し、合併症の発症や人工透析が必要となる確率を予測・可視化することが可能。
これらの指標を参考に、保険者が緊急度に応じた効果的な受診勧奨や保健指導の実施ができ、さらには重症化予防が期待できる。
日立は、今後、栃木県と栃木県国保連との取り組みにより培ったノウハウを生かし、本サービスの他自治体への展開をめざすとともに、保健指導のさらなる効率化を目的に遠隔保健指導アプリケーションや保健指導効果測定の事業展開を図るなど、幅広い顧客の課題解決に貢献していくとしている。