芝浦工業大学は27日、工学部情報工学科の新熊亮一教授が、携帯電話基地局の通信量を精度高く予測し、それに応じて基地局の稼働・休止を切り替えるシステムを考案したと発表した。
4~5千億kwhと推計される世界の基地局の電力使用量(2016年)を削減するため、世界中で同様の研究が進んでいる。しかし、休止させた基地局から通信記録を収集できず、通信全体の予測精度が低下することが課題だった。このシステムでは稼働中の基地局からの記録のみでも、その中から最も重要度の高い記録を推定して学習に組み込むことで、高い予測精度を達成した。
休止した各基地局は電力使用量を約6割削減でき、CO2排出量削減には通信量に応じた制御が重要。また電力供給量が気候に左右される再生可能エネルギーで基地局電力をまかなうことにも対応可能なシステム。
国内携帯大手3社の基地局関連の電力消費量合計は約51億kwhに上る*。
一方、サービス展開が進む5Gの基地局は4Gと比べてカバー範囲が狭く、基地局を増やす必要がある。脱炭素に向けて電源の再エネ化も進むが、供給量が不安定なため通信量に応じて電源を切り、電力消費量を削減する技術開発が進んでいる。しかし、休止中の基地局の通信記録を学習できず、通信量の予測精度低下が課題だった。
稼働中の基地局の記録だけを使用する場合でも、最も重要度の高い基地局の記録を予測に組み込むために、予測への貢献度を推定。この方式を、テレコムイタリアの公表通信記録を使った実験で評価した。
結果、通信量が多い基地局を予測に使う特徴選択手法や相関関係を基にした手法よりも、優れていることが示されたという。この成果は情報工学のトップジャーナル「IEEE Network」(11・12月号Volume:35 Issue:6)に掲載された。
今後は通信上のアプリケーションデータを区別し、特徴を考慮した制御をテキストや動画、Webページなど、さまざまな通信上のアプリケーションデータを区別してそれぞれの特徴を抽出して、機械学習モデルを作り予測精度を向上させる。例えばオンライン会議は長いなど、アプリケーションによって通信時間が異なるため、その特徴を考慮した制御も可能になるという。