NVIDIA、AGRISTがNVIDIA Jetsonを搭載した最新のピーマン収穫ロボットを発表

NVIDIAは11日、持続可能な農業作りを目指すAGRISTが「NVIDIA Jetson」を搭載した最新のピーマン収穫ロボットを発表したと明らかにした。

日照時間の長さから、「日本のひなた」と称される宮崎県。そのほぼ中心に、新富町という人口1万7千人ほどの小さな町がある。美しい海岸線と豊かな自然に恵まれたこの町は、宮崎平野を代表する野菜の産地であり、特にピーマンの生産量においては全国でトップレベル。

今、「NVIDIA Jetson」がこの町のピーマンの収穫において活躍している。新富町発の農業ロボット ベンチャー、AGRISTは3月、ピーマン自動収穫ロボット「L(エル)」の最新モデルを発表した。このロボットは「NVIDIA Jetson」を搭載し、市場投入モデルとして2022年秋からレンタルサービスが開始する予定。

行政も含めて農業で街を盛り上げていこうとする中で、新富町役場は2017年に地域商社「こゆ財団」を設立。その代表理事にシリコンバレーのITベンチャー企業でサービス開発責任者を務め、帰国後は地域創生事業に取り組んでいた齋藤潤一氏が就任した。

「こゆ財団」では「儲かる農業研究会」という農家を中心とした勉強会を定期的に開催しており、その中で、「農業界は平均年齢が67歳を超えており、5年後、10年後を考えた時に今働いているパートさんもそのまま確保することは難しい。人手が足りず、持続可能ではない今の農業の状況をロボットで何とか変えられないか。」という声が農家から挙がっていた。

農業へのロボットの必要性を感じながらも、開発する技術がなかった齋藤氏が、ロボット開発の仕事に従事していた秦裕貴氏と出会ったことがAGRIST起業のきっかけ。もともと農業に興味があった秦氏は、「農業とテクノロジを結びつけるビジネスは世界を変える可能性がある」という斎藤氏のビジョンに賛同し、2019年に齋藤氏が代表取締役社長、秦氏が取締役CTOとしてAGRISTを立ち上げた。

秦氏は高専時代からロボット開発において慣れ親しんでいた「NVIDIA Jetson」を活用し、ピーマン収穫ロボット「L」を開発した。「L」の最大の特徴は吊り下げ式の形状。ハウスの天井から張り巡らせたワイヤーをロープウェイのように伝いながら移動し、ハンドによる収穫を行う。ユニークなネーミングは、吊り下げ式のロボットのフレームがL字型であること、そして、すべてのピーマンを収穫するのではなく「L玉」と呼ばれる大きなピーマンを積極的に収穫することにより、周りの小さいピーマンを効率的に育成するというロボットのコンセプトから由来している。

「もしエンジニアのみで収穫ロボットを構想していたらとしたら、地上を走行する台車型のロボットになっていたと思いますが、実は農業の現場では地面がぬかるんでいたり、障害物が置かれていることも多いです。現場を熟知した農家の方の話を聞きながら開発を進めることで、ロボットの移動における課題を吊り上げ式という形で解決できました。」と秦氏は述べている。

二つ目の特徴はロボットのハンドです。「L」は吊り下げ式で移動しながらピーマンを探し、見つけるとAGRISTが自社で開発したハンドでカットし、ロボットのボックスの中にためていく。一定量たまると、所定の場所のコンテナに放出し、また戻って収穫を続ける。収穫する際はピーマンの茎を回転するベルトで巻き取りながら把持する。このハンドのおかげで吊り下げ式で多少揺れたとしても、ピーマンがベルトに吸い込まれるように入っていくことで安定して収穫することができるという。

動画:「L」がピーマンを認識する様子

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「NVIDIA Jetson」

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