セイコーエプソン(エプソン)は1日、DXの推進により、AI(人工知能)を活用した家畜の健康管理の技術開発と普及など、畜産業の生産性向上に向けた連携協定を、長野県と締結すると発表した。
農林水産業は、高齢化や人手不足などの課題を抱えており、労働環境の改善や効率化が強く求められている。特に畜産業においては、市場規模が大きく、DX化による生産性改善の余地が大きい状況にある。
このような状況を改善するために、 本協定において以下の取り組みを推進する。
【22年度の取り組み】
●AIによるボディーコンディションスコア(以下、BCS)の画像判定
BCSは、牛体への脂肪の付き具合を目視によりスコア1(痩せすぎ)から5(太りすぎ)までに区分する技術。BCSは3.0から3.5までが適正とされ、3.75以上では牛の健康に問題となりやすい。
現状課題:BCSは熟練した技術者の目視判定に頼っているため、ばらつきが発生
達成目標:BCSを画像からAIが判定するシステムにより、経験の浅い技術者や農家でも簡単に客観的なBCSが測定でき、正確な牛の体型管理を実現
●AIによる飼料成分の迅速判定(新飼料分析システム)
牛の体重や健康維持に重要な飼料成分分析には多くのデータを活用するため時間がかかる上に、飼料給与量の計算には専門知識が必須となる。
現状課題:飼料成分の分析には多くの手間と時間と予算を必要とする。
達成目標:飼料を撮影し、画像の波長分析から飼料成分を推定できるシステムを構築。経験の浅い技術者や農家でも成分分析を迅速かつ低コストで実施でき、給与量試算の簡素化を目指す。
【23年度以降の共同研究の方向性】
●牛群ドックと飼料分析の連携、最終生産物も含めたDX化
●牛の個体識別の研究
●牛の体に装着できる脈拍や活動量計、体温計の研究
これらの取り組みを通し、エプソンが保有する分光・IMU・GPS・生体計測などの独自の「センシング」、「認識・分析」、「AI」技術と、長野県畜産試験場が牛に関する試験研究を通じて得た「飼養管理」、「分析」、「健康・疾病診断」技術の連携により、畜産業におけるDX化を推進し、持続可能な社会の実現に貢献していく。