日立、AI・シミュレーション技術を活用し「人流予測情報提供サービス」を販売開始
日立製作所(日立)は、列車やバスなどの公共交通事業者向けに、乗客の流れを予測・シミュレーションして、混雑情報の分析結果を提供する「人流予測情報提供サービス」を開発し、1月27日から販売を開始する。
本サービスは、日立独自のAI・シミュレーション技術を活用して、交通事業者が保有する発着場所別の人数データや時刻表データを解析し列車の乗車人数を高精度に推定し、駅や列車の利用者数や利用者の移動時間などを出力し提供するサービス。
各列車の混雑度合いを分析し、過去の混雑状況の再現や将来の予測を行うことができる。利用者向けに、駅や車両ごとの混雑情報を配信することで、「密」を回避した経路や列車選択を可能とするほか、交通事業者に対しては、公共交通の需要予測情報を提供し、列車の運行本数や運行間隔の見直しなど、輸送業務における運用コスト削減を支援する。
なお、本サービスは、今回の販売開始に先立ち、東京地下鉄 (東京メトロ)が提供するモバイル向け「東京メトロmy!アプリ」や東京メトロの公式ホームページで配信する、全9路線の全ての駅区間、全171駅に関する時間帯ごとの列車や駅改札口の混雑状況の見える化に用いられている。
新型コロナウイルス感染症への対策のため、移動中の「密」を避けることや不要不急の外出を控えることが重要となるとともに、オフピーク通勤や通学への協力が推奨されるなど、混雑を緩和・回避して「密」を作らない快適な移動の実現に向け、駅や列車、公共施設、大型施設などにおける混雑状況の把握のニーズが高まっている。
一方、従来、列車の乗車率を見える化する取り組みとして、目視による計測や一部の車両から取得したセンサーデータをもとに乗車人数を推定する方法が主流だったが、正確さの面やデータ収集から分析までに要するコスト面での課題があった。
日立は、2017年に、デンマーク王国の無人運転地下鉄Copenhagen Metroにおいて、当日の乗降データから数時間後の列車の混雑度合いを予測し、需要に応じた最適ダイヤの自動作成に取り組む実証実験を行うなど、AI・シミュレーション技術を活用して、快適で便利な乗客向けサービスの提供や、鉄道事業者の運行効率のさらなる向上、省エネルギー化の実現を支援するソリューションの開発に取り組んできた。
今回販売開始するサービスは、本AI・シミュレーション技術を用い、利用人数に関する集計データをもとに、移動需要を出発地と到着地の組み合わせの単位で予測することで、個人を特定せずに経路や列車ごとの利用状況を精度高く推定することが可能だという。
本サービスは、日立のLumadaで展開されるソリューションの1つとして、乗客の需要と交通事業者の輸送力の最適化、安全・安定輸送の維持に寄与する。交通事業者の運行計画・管理、旅客案内、保守業務といった各業務で共通的に利用可能なほか、ダイヤ作成や車両・乗務員の配置・運用計画の立案といった日立の各種ソリューションと組み合わせて、交通事業者のデジタル・トランスフォーメーション(DX)推進を多角的に支援する。
また、今後は、ポイント管理システムなどから得られる会員情報や購買データなど外部システムのデータと組み合わせ、沿線住民向けサービスの向上や需要にもとづく都市開発といった新たなサービス創出を支援するなど、分析メニューの拡大を図っていくという。