メドメイン、非浸潤性乳管癌を浸潤性乳管癌と識別する人工知能の開発に成功
- 2022/2/3
- 医療
- Deep Learning, デジタル病理支援ソリューション, 乳管癌, 乳腺の病理組織
デジタル病理支援ソリューション「PidPort」を提供するメドメインは3日、Deep Learning(深層学習)を用いることで、乳腺の病理組織デジタル標本において、非浸潤性乳管癌を浸潤性乳管癌と識別する人工知能の開発に成功したと発表した。
また、この開発に関する論文をSpringer Nature社が発行するVirchows Archivに投稿し、2022年1月25日に掲載されたことを発表した。
本研究は、2021年10月にCancers誌に発表した乳腺浸潤性乳管癌を検出する人工知能の開発に引き続く一連の乳腺病理AI開発。従前、同社から論文発表してきた「弱教師あり学習」および「回帰型ニューラルネットワーク(RNN)」に関する研究を応用し、開発した。
非浸潤性乳管癌は、乳癌検診におけるマンモグラフィの導入などにより、全乳癌のうち10%程度にまで増加している。非浸潤性乳管癌は、癌巣を完全に切除すれば予後良好で、実際の臨床で問題となるのは、「浸潤巣の見逃しのない非浸潤性乳管癌」になる。
今回の研究の目的は、乳腺病理組織デジタル標本(生検・手術材料)において、非浸潤性乳管癌と浸潤性乳管癌との識別を可能にする人工知能を深層学習を用いることで開発することにありる。
本研究では国内の医療機関(国際医療福祉大学三田病院、JA北海道厚生連札幌厚生病院)から、乳腺病理組織標本(生検および手術材料)の提供を受け、「少数例の病理医によるアノテーションデータ」ならびに「弱教師帰あり学習に回型ニューラルネットワークを併用した」深層学習を行うことで、精密かつ大量のアノテーションデータを用いることなく、乳腺非浸潤性乳管癌を識別する人工知能を開発した。また、開発した人工知能については、教師データとは異なる検証症例を用いて精度の検証を行った。
開発したモデルを検証したところ、検証症例において、ROC-AUCが非浸潤性乳管癌において0.960、浸潤性乳管癌において0.977という極めて高い精度の結果が得られた。また、ヒートマップにより表示された人工知能が識別した乳腺非浸潤性乳管癌および浸潤性乳管癌を示唆する領域は、病理医による検証の結果、妥当であることが確認されたという。
本研究成果のポイントは、境界病変あるいは曖昧さを含むような病変においても、精度の担保された人工知能の開発が可能であり、病理医による大量の詳細なアノテーションデータは必ずしも必要であるとは限らないことを示唆している点。すなわち、「不完全な情報」に基づく推論が可能であることを意味している。
今回開発した人工知能モデルの検証を、さらに複数施設並びに大規模症例にて行い、検証を進めていくという。