金沢工業大学の長田茂美教授(情報技術AI研究所所長)と安藤ハザマは21日、深層学習に基づく「コンクリートの締固めAI判定システム」を開発したと発表した。
システムのプロトタイプを用いた実地試験をコンクリート製品工場で実施し、AIによる締固めの完了および未完了の判定結果をリアルタイムに表示できることを確認した。
長田教授はAI等の知能化技術を専門としており、林業分野の共同研究においてAIや画像認識技術を用いた樹種判別・資源量推定のシステムを開発するなど、これまでも社会実装型の研究・開発に携わっている。今回の安藤ハザマとの共同研究では、深層学習や画像認識などの専門的な知識・技術を提供するとともに、安藤ハザマと共同で締固めの判定プログラムの開発を行った。
コンクリートは、構造物の設計および施工条件に合わせて所要の品質(圧縮強度、耐久性等)が得られるように配合選定が行われる。しかし、適切に選定されたコンクリートであっても、適切な打込み・締固めが行われないとコンクリートの性能は最大限には発揮されない。
一方、コンクリートの締固め作業の完了時期は、作業従事者の経験に基づく目視評価を基に判断されており、その判断は人によって異なるという課題があった。近年、建設業就業者の減少による労働力不足、熟練工の減少による品質低下が懸念されており、コンクリート工の生産性向上、作業従事者の力量によらない技術の開発が求められている。
本システムは、従来の目視評価に基づく判定手法の代替として、深層学習に基づく判定手法を提案するもの。本システムの特長は以下のとおり。
①コンクリート専門家の締固め判定を深層学習で実現
コンクリートの専門家の判断に基づく完了判定をAIが深層学習によって繰返し学習することで、コンクリートの専門家による完了判定に近い判定を実現する。
②リアルタイム判定
ビデオカメラで撮影した締固め中のコンクリート表面の映像を判定プログラム搭載パソコンに転送し、リアルタイムに締固め判定を行い、その判定結果をモニタ上へ表示する(タイムラグ1秒程度)。
③メッシュ毎に枠の色で判定結果を表示
撮影した映像はメッシュ状に自動分割(プロトタイプでは24分割)してメッシュ毎に判定し、締固め未完了の場合は赤色、締固め完了の場合は緑色に枠の色を変化させて表示する。
実地試験では、コンクリート締固め作業に従事する技能者に、AIによる締固めの完了判定結果をリアルタイムで示すことができた。これにより、作業従事者の力量によらない締固め判定ができるようになり、コンクリートの施工品質が安定するという。