IBMは12日、「世界のAI導入状況 2022年 (Global AI Adoption Index 2022)」の日本語版を発表した。
本調査は、IBMの委託によりMorning Consult社が2022年3月30日から4月12日にかけて、自社のIT関連の意思決定について何らかの知識/影響力を持つ7502人の世界の経営層を対象として実施したもの。
本調査により、世界のAI導入率が前年の2021年と比較して着実に高まっており、2022年には35%に達したことが明らかになった。AIが、より利用しやすく、実装しやすくなってきていることで、AIの成長が加速していることが、さらに浮き彫りになった。
また、この導入率の増加は、企業が人材・スキル不足に対処しながら、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの課題に取り組み、自社のデジタル変革に投資する中で、AIの価値を認識したことによるものであることが明らかになった。実際、2021年と比較して、AIの導入が4ポイント増加している。
さらに、本調査で初めて、サステナビリティーの取り組みにAIを活用する計画について企業に聞き取り調査したところ、AIが重要な役割を果たす見込みにあることがわかった。調査対象となったITプロフェッショナルの66%が、ESGの取り組みを加速させるために、自社が現在AIを適用しているか、AIを適用する予定であると回答している。
「Global AI Adoption Index 2022」のハイライトは、以下のとおり。
・世界的にAIの導入は着実に進んでおり、ほとんどの企業がすでにAIを利用しているか、利用する予定:現在、35%の企業がAIを業務に利用していると回答している。2021年と比較すると、2022年のAI導入率は13%増加した。さらに、42%の企業がAIの導入を検討していると回答しており、大企業は中堅企業よりもAIを利用する割合が高いことが示された。AIの導入率では中国とインドの企業がリードしており、これらの国のITプロフェッショナルの60%近くが、自分の組織がすでにAIを積極的に利用していると回答している。一方、韓国は22%、オーストラリアは24%、米国は25%、英国は26%に留まった。金融サービス、メディア、エネルギー、自動車、石油、航空宇宙などの業界のITプロフェッショナルは、自社がAIを積極的に導入していると回答した割合が最も高く、小売、旅行、政府/連邦サービス、医療などの業界の企業は、その割合が最も低いという結果が示された。
・水平展開には、明確なデータ戦略とAI戦略の策定が鍵:AI導入が緩やかであることの主な理由は、ビジネス目標を達成するため、優れたデータ管理戦略を実装し、そのデータにAIを適用する必要性。AIを導入していない企業は、自社が適切なデータ管理ツールを有しているという自信がほとんどない、またはまったくないと回答する割合が3倍高くなっている。現在、37%の企業がAI戦略を策定中であり、28%がすでに包括的な戦略を策定しており、25%が限られた、または特定のユースケースにのみ焦点を当てた戦略を実施している。
・自動化は、スキル・ギャップや労働力不足への対処に貢献:コスト、ツール不足、プロジェクトやデータの複雑さ以上に、スキル・ギャップが依然としてAI導入の最大の障壁となっている。同時にAIは、例えば、スキルの高い従業員の生産性向上のためのタスクの自動化、学習や従業員エンゲージメントの支援などにより、組織がスキル不足に対処するのにも役立っている。ほぼ4社に1社が労働力不足やスキル不足を理由にAIを導入しており、世界のITプロフェッショナルの30%が、新しいAIや自動化ソフトウェア/ツールにより、自社の社員がすでに時間を節約していると回答している。
・信頼を重視する傾向が強まっているが、具体的な措置は欠如:信頼でき、責任あるAIの実践を確立することと、AIの成熟度は密接に関連している。AIを実装している企業ほど、信頼性の重要性に価値を置く傾向がある。現在AIを導入している企業のITプロフェッショナルは、AIの導入を単に検討しているITプロフェッショナルよりも、自社のビジネスがAIの説明可能性に価値を置いていると回答する割合が17%高くなっている。しかし、ビジネス・リーダーの過半数が信頼できるAIが重要であると回答する一方で、過半数の組織が、バイアスの削減(74%)、パフォーマンスのばらつきやモデル・ドリフトの追跡(68%)、AIによる決定の説明可能性の確保(61%)など、AIの信頼性と責任を保証するための重要な措置を講じていない。
・より持続可能なオペレーションを構築:3分の2以上の企業がサステナビリティーの取り組みの一環として、現在AIを使用しているか、使用する予定であることから、AIは、世界中の組織のサステナビリティーの取り組みにおいて、ますます大きな役割を果たすようになることが予想される。5社に1社は、環境面のプレッシャーを理由に、すでにAIを導入している。
・自動化やセキュリティーなどの一般的なユースケースにより導入が促進:今日、企業はさまざまなユースケースにAIを適用しているが、最も導入が進んでいるのは、IT運用、セキュリティーや脅威検知、ビジネス・プロセスの自動化といった領域。現在、すでに3分の1の企業がIT運用にAIを活用して(AIOps)主要なプロセスを自動化することで、アプリケーションのパフォーマンスを維持しながら、リソース割り当てを効率化している。AIを導入している企業の3分の1は、マーケティング、セールス、カスタマー・ケアなどの領域に、自然言語処理などを適用している。
調査方法
本調査は、2022年3月30日から4月12日にかけて、自社のIT関連の意思決定について何らかの知識/影響力を持つ7502名の経営幹部(意思決定者)のサンプル(米国、英国、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、中国、インド、シンガポール、オーストラリア、カナダ、アラブ首長国連邦、韓国の各国でそれぞれ500人の回答者、ラテンアメリカ地域全体で1000人の回答者)を対象として実施した。インタビューはオンラインで行われ、各国のフルサンプルの誤差は±4%ポイント、ラテンアメリカ地域の誤差は±3%ポイント(信頼水準95%)だった。