キリンビールは、ビール類を製造する醸造工程において、AIを活用して最適な濾過計画を自動で立案するシステムをNTTデータと共同で開発し、段階的な試験導入を経て、2020年12月よりキリンビール全9工場で本格展開および効果測定を開始。11日、約半年のシステム展開を経て、キリンビール全9工場で年間3000時間以上の時間創出を実現できることを確認したと発表した。
ビール類に対するニーズが多様化する中で、顧客が求める商品を届けするために、同社では本社・各工場が連携して製造計画を立てている。各工場では、ビール類商品を醸造する「仕込」や「濾過」、「パッケージング」などの製造計画を立てているが、中でも「濾過計画業務」は熟練者の知見に頼る複雑な作業であり、さまざまな条件を勘案しながら立案するため、作業に時間がかかると同時に技術伝承が難しい業務の一つでもある。
同社は、2019年にNTTデータと協同して「濾過計画業務」を自動化し、キリンビール福岡工場に初めて導入した。同工場で導入した当システムは、各工場の熟練者にヒアリングを行い、“設備”や“製造体制”による制約条件を踏まえた上で、制約プログラミング技術を活用することで標準化し、2020年1月から製造規模の大きなキリンビール横浜工場、加えて少量多液種の製造を担うキリンビール滋賀工場で展開を開始した。
当該3工場にわたる段階的な導入を経て効果を確認し、2020年5月以降に残り6工場(キリンビール北海道千歳工場・仙台工場・取手工場・名古屋工場・神戸工場・岡山工場)へも段階的な試験導入を進め、2020年12月から全9工場での本格展開を開始した。システム導入により、熟練者が1回につき最大6.5時間程度かけていた「濾過計画業務」を最短で55分まで短縮し、システム導入前に比べて全9工場で年間3000時間以上の時間創出が可能になることを確認。各工場では創出された時間でさらなる品質向上に向けた取り組みや、熟練者からの技術伝承、若手の育成などを進め、高い品質管理レベルの製造体制を維持する。
今回の導入結果を踏まえ、濾過計画の前工程である「仕込」・「酵母計画」へのシステムの横展開を進めており、将来的には醸造計画業務全体の自動化によるさらなる効果の創出と新価値創造を目指すという。