DICは27日、LIGHTzと共同で、生産現場で熟練者が過去に経験した設備トラブルの知見を言語化し、新たな不具合発生時に現場オペレーターの要因解決につながる事例を迅速に引き出すことが可能な教師型AIシステム「Prism(プリズム)」を開発し、運用を開始したと発表した。
国内の生産現場においては、少子高齢化による労働人口の減少や高齢化を背景とした熟練者の技術伝承という共通課題がある。同社でも生産現場における「安全で安定した品質のものづくり」や、「設備トラブルへの的確な対応」に関する技術伝承を課題と認識し、その解決策として、生産部門におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の活用を検討してきた。
2019年にDXを活用した技術伝承の課題に取り組むプロジェクトを立ち上げてから、まずモデル工場の選定にあたった結果、既に顔料の生産現場で設備保全の不具合情報をデータベース化しており、AI導入の下地があった鹿島工場をモデル工場と位置付け、設備保全の不具合解決につながるAIの活用を進めることとした。
同社は技術伝承という観点から、単に過去のデータから答えだけを導き出すのではなく、熟練者の複雑な思考を言語化することで「言葉と言葉のつながり」を可視化し、「気づきや閃き」を与えることに長けた“教師型AIツール”である LIGHTzのORGENIUS(オルジニアス)の導入を決め、同AIツールと鹿島工場の設備保全管理システムに蓄積された膨大なデータを連携させるためのフロントエンドシステムとして「Prism」を開発した。
本システムは、以下三つの特長から、中長期的な視点で同社の生産現場での設備保全に係る課題解決に貢献するものだという。
1.教師型AIを通じて、既存の設備保全データをベテラン社員の思考の見える化(言語化)に変換することにより、これまでの保全ノウハウをより自然な形で次世代に技術伝承できること
2.ノウハウの蓄積に留まらず、汎知化することで常に現場オペレーターに学ぶ意識を醸成するシステムであること
3.解を検索するだけでなく解を導き出すプロセスから新たな気づきを促す「ホワイトボックス型AI」であること
同社は、本システムを今年6月からモデル工場である鹿島工場の顔料生産現場で導入し、まずはシステム定着と更なる活用方法の検討を進めている。鹿島工場での実績と成果を積み上げた後には、同社の他の工場や事業所への水平展開も予定している。
DICグループは、中期経営計画「DIC111」において、デジタルトランスフォーメーション推進(DX推進)を掲げている。生産部門においては、スマート工場の実現に向け今後も引き続きDXを推進し、幅広い事業でAI技術を活用することで生産現場の課題解決や効率化を進めていくとしている。