近畿大学とNTTドコモ(ドコモ)は30日、5Gを活用した水中ドローンによる完全養殖クロマグロの状態監視を目的として、近畿大学水産研究所大島実験場のいけす内の映像をリアルタイム伝送し、同時に近畿大学東大阪キャンパスから、水中ドローンの遠隔操作を行う実証実験を実施する。本実証実験以降も検証を重ね、水中ドローンを活用した養殖業のさらなる効率化をめざすという。
本実証実験は、2020年に近畿大学、日本電信電話、ドコモ、西日本電信電話、NTTデータの5者で締結した「5Gの推進、「スマートシティ・スマートキャンパス」創造に関する包括連携協定」の取り組みの一つとして行うもの。具体的には5Gの低遅延通信を活用し、水中ドローンで撮影した映像をライブ中継機を通じて陸上へリアルタイムで伝送。いけすから100km以上離れた近畿大学東大阪キャンパスから、水産研究所職員が伝送された映像を確認し、現場の操縦者に作業内容や撮影ポイントの指示を行うほか、水中ドローンを遠隔から操作することで、遠隔地からいけす内の状態を把握する。
水中ドローンで撮影した映像はドコモのクラウドサービス「docomo sky Cloud」へアップロードするため、多拠点から高精細映像を閲覧することが可能。本実証実験では、マグロの状態監視における水中ドローンの性能や映像伝送および遠隔操作システムの有用性を検証する。
マグロの養殖において、いけす内の状態監視を行うことは、マグロの品質や水揚げ量を大きく左右するため重要だが、これまではダイバーが水中にもぐることで、いけすの状態や水質、マグロの健康状態の確認や死亡魚の回収を行っていた。そのため、作業者の負担も大きく、安全性においても課題があった。本実証実験では、水中ドローンと映像伝送および遠隔操作システムを活用し、作業者が遠隔地から指示を出したり、ダイバーが水中で行う作業を代替したりすることで、作業効率化や生産性、安全性の向上が期待できるという。
近畿大学とドコモは、実証実験を通じて、水中ドローンを活用したいけす内の状態監視の検証を行い、水産現場におけるソリューションの創出や地域の社会課題の解決に貢献していく。