中央大学、生成系 AI に関する基本的な考え方と教育課程における利用上の留意事項について

中央大学は7日、生成系 AI の活用に関して潜在的な可能性とともに倫理的な問題や社会的な課題が存在することを踏まえ、本学における生成系 AI に関する基本的な考え方と教育課程における利用上の留意事項について発表した。

下記の「基本的な考え方」は要旨。その全文は、同学ウェブサイトで確認できる。

中央大学における生成系 AI に関する基本的な考え方(要旨) 中央大学 学長 河合 久
1.生成系 AI は、現実社会の一部であるインターネット上に存在する情報の学習を起点とする以上、当然に、現実社会の歪みの影響を受けるものであることを自覚する必要があります。たとえば、生成系 AI システムには、インターネット上の憎悪表現の影響を受けた出力をするリスクが存在する以上、その出力・提示内容を人が倫理的観点から判断しつつ利用することが必要です。
2.「学習」された情報をどのような出力・提示内容に結びつけるかというアルゴリズムへの関心を持ち続け、その可視化に努力することが必要です。たとえば、現実社会における憎悪表現等の反社会的言説を排除しきれない以上、生成系 AI システムをそれらの影響から自由とするために、アルゴリズムの側で対応することが考えられます。しかし、これは「反社会的」たることの内実を、「誰かが」「予め」定めることを含意し、特定の価値の不可視化による排除や、逆に特定の価値押しつけのリスクが生じることになります。そこで、生成系 AI システムの研究開発や社会実装には、どのような価値を肯定的又は否定的に取り扱うのか、という点に係る説明責任が伴うと考えるべきです。
3.私たちは、生成系 AI を道具として利用することにより、人生や社会を豊かに発展させることを妨げられるべきではありませんが、それを担保するためには、出力・提示内容が生成系 AI の産物であることを明示した上で利用することが必要です。たとえば、生成系 AI システムの利用者が、その出力・提示内容を自らの著作物として主張することは法的に問題があるのみならず、自らの人生や社会のあり方は自らが決定するという自律の観点からも大きな危険をはらんでいます。生成系 AI システムの判断が、「私」や「私たち」の判断として流通するならば、人格的自律に基づく個人の自由とそれに伴う責任という、私たちの社会の根幹を支える価値が危機に瀕することになります。
4.生成系 AI システムは、現在においては、まさに新規性の強い発展途上の技術であると共に、インターネット上に存在する情報を起点とするという構造上、永遠に「完成」しないシステムであることを認識して利用する必要があります。そこには、第1に述べたような歪みが含まれるだけでなく、多くの事実に関する誤りや、小さいけれども重要な事実の無視といったリスクが伴います。当然のことではありますが、ある生成系 AI システムの出力・提示内容について、常に確認をしつつ利用することが重要です。
5.生成系 AI システムを含むインターネット上に展開されるシステムは、国境を超える特性がありますが、これらの研究開発や社会実装に係る文化や法規制は、国や地域ごとに大きく異なっていることに留意が必要です。たとえば、知的財産権やプライバシー権との関係を踏まえて、多くの国や地域において異なる内容の規制が導入されつつあり、日本においては問題と考えられないことであっても、他の国や地域では強い非難の対象となることもあります。そこで、文化や法の差違・多様性について、私たち自身の理解を深めることが、極めて重要となります。生成系 AI の技術は急速に進化しており、その社会的・倫理的な側面も重要な議論の対象となっています。中央大学は、上の点に留意しつつ、生成系 AI の活用と研究の発展に向けて取り組むと共に、学生や研究教育者が適正な利活用を行える環境整備に努めてまいります。

教育課程における生成系 AI の利用上の留意事項
(この留意事項の対象範囲)
1 この留意事項は、中央大学(以下「本大学」という。)で教育を担当する全ての教員及び本大学で学ぶ全ての学生を対象とする。
(この留意事項の位置付け)
2 この留意事項は、本大学における全ての教育課程における生成系 AI システムの利用に係る原則を定める。ただし、教育課程を管理する学部、研究科、全学連携教育機構等の教育機関(以下「学部等」という。)は、それぞれが管理する教育課程における生成系 AI の利用について、必要に応じて、別の定めをすることができる。また、学部等は、その教育課程を構成する科目担当教員が、この留意事項又は学部等の定めと異なる定めをすることを認めることができる。
(生成系 AI システムの定義)
3 この留意事項において、生成系 AI システムとは、コンピュータシステム(ネットワーク上のサービスとして提供されているものを含む。)のうち、データに基づく学習を行い、かつ、その学習結果に基づく新たな出力を行う機能を備えるものをいう。
(教員による生成系 AI システムの利用)
4 教員は、その担当する科目の教育について、道具として生成系 AI システムを利用し、及び、教材として生成系 AI システムの出力を利用することを妨げられない。
5 教員は、前項の利用を行った場合、当該科目の履修者に対して、当該利用の事実を告知しなければならない。
(学生による生成系 AI システムの利用)
6 学生は、その履修する科目の学修について、道具として生成系 AI システムを用いることを妨げられない。ただし、生成系 AI システムは、利用者が入力した情報を記録及び学習する特性を有することから、次のような情報を入力してはならない。
ア 研究上の秘密等一般に秘密として取り扱うべき情報
イ 個人情報やプライバシー情報等の人格的利益を害する蓋然性のある情報
ウ 他者の名誉等の人格的利益を害することを目的とする虚偽の情報
7 前項にかかわらず、学生が履修する科目においてレポート等の学修成果物(以下「レポート等」という。)の作成及び提出をする場合においては、生成系 AI システムの出力内容を参考資料とすることは差し支えないが、当該出力内容そのものをレポート等としてはならない。
8 学生が、レポート等の作成及び提出をする場合において、生成系 AI システムの出力内容を参考資料とした場合は、当該レポート等に次の事項を明示し、又は、添付しなければならない。ただし、ウ及びエについては、当該科目を担当する教員が予め指示したときは、追加提出に応じることができるように準備することで足りるものとする。
ア 利用した生成系 AI システムの名称及びバージョン
イ 生成系 AI システムの利用日
ウ 生成系 AI システムに投入したプロンプト等の情報及び環境設定
エ 生成系 AI システムの出力内容
(教員による学生の生成系 AI システム利用の制限)
9 第6項から第8項にかかわらず、教員は、その担当する科目の教育に必要と認める場合、当該科目における学修の特定の部分について、生成系 AI システムの利用を禁止し、又は、制限することができる。ただし、これを行う場合には、禁止又は制限の内容及びその教育上の理由を明瞭に履修学生に示さなければならない。
(成績評価)
10 学生が第7項又は第8項に違反したレポート等を提出した場合、当該科目を担当する教員は、成績評価上、当該レポート等が提出されなかったものとして扱うものとする。
11 前項にかかわらず、当該科目を担当する教員は、他の成績評価要素によればS・A・B・Cの評価をもって単位を付与すべき場合であっても、当該学生の成績をF(評価不能)とすることができる。ただし、この措置を行うためには、当該科目を履修する学生に、予めその旨を周知しておかなければならない。
(改正)
12 この留意事項の改正は、学部長会議の議を経て、学長がこれを行う。
以上

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