IBMは9日、AI倫理に関する調査レポート「AI倫理の実践 – 信頼できるAI実現へ、全社的取り組みを」の日本語版を発表した。
本調査レポートは、IBMのシンクタンクであるIBM Institute for Business Value (IBV)がオックスフォード・エコノミクス社の協力のもと、2021年の5月から7月までを調査期間とし、北米、中南米、欧州、中東、アフリカ、アジアを含む22カ国を拠点とする組織の1200人の経営層と、22以上の業種にわたる、事業・技術部門の16役職に対して、経営者がAI倫理の重要性についてどのように考え、また組織がそれをどのように運用しているか、調査を実施したもの。
今回の調査結果では、組織におけるAI倫理の指導と維持に責任を持つ役割の根本的な変化が明らかになった。 回答者の80%がAI倫理について責任を負うべき主な職務を問われた際、CEOなどの非技術部門のリーダーをAI倫理の責任者、推進者として挙げ、2018年時の15%から急上昇した結果となった。
また、世界規模の調査では、サステナビリティー、社会的責任、ダイバーシティーとインクルージョンの面で同業他社と比較して優れたパフォーマンスを発揮するなど、信頼できるAIを推進することが強く求められているにもかかわらず、リーダーの意図と有意義な行動の間にギャップがあることも浮き彫りになった。その結果、以下のことが明らかになった。
管理職がAI倫理の推進役として認識
・CEO (28%)、取締役会(10%)、法律顧問(10%)、プライバシー担当役員(8%)、リスクおよびコンプライアンス担当役員(6%)は、AI倫理に最も責任があると見られていることが、調査対象者によって示唆
・回答者の66%は、組織の倫理戦略に強い影響力を持つ者として、CEOやその他の役員を挙げるほか、半数以上が取締役会の指示(58%)と株主コミュニティー(53%)も列挙
信頼できるAIの構築は戦略的差別化要因として認識され、組織はAI倫理メカニズムを導入開始
・調査対象のビジネスリーダーの4分の3以上が、AI倫理が組織にとって重要であることに同意しており、2018年時の約50%から上昇
・同時に75%の回答者が倫理を競争上の差別化要因になると考え、67%以上の回答者がAIならびにAI倫理を重要視していることから、サステナビリティー、社会的責任、ダイバーシティーとインクルージョンの面で他社をしのぐであろうと回答
・多くの企業が前進し始め、実際に回答者の半数以上がAI倫理をビジネス倫理への既存のアプローチに組み込むための対策を講じたと回答
・回答者の45%以上がAIプロジェクトのリスク・アセスメント・フレームワークや監査/レビュー・プロセスなどAIに特化した倫理メカニズムを作成したと回答
AIソリューションに倫理原則を担保し組み込むことは組織にとって急務だが、進捗状況に遅れ
・より多くの調査対象のCEO(79%)が、2018 年の20%からAIの実践にAI倫理に取り組む準備を整え、また、回答した組織の半数以上がAI倫理に関する共通原則を公に支持
・ところが回答した組織の4分の1未満しかAI倫理を運用可能にしておらず、さらに自社の慣行や行動が既定された原則や価値観と一致する(あるいは上回る)ことに強く同意した回答者はわずか20%未満
・調査対象となった組織の68%は、AIにおけるバイアスを軽減するためには多様かつ開放的な職場環境を持つことが重要であることを認識していますが、調査結果によるとAIチームは実質的に多様性が他の組織より依然低く、女性の割合が5.5倍、LGBTなどの割合が4倍、人種的な割合が1.7倍低いことを示唆